第69回 臨床検査技師国家試験 過去問解説AM(1~15)です。間違いや要望等ありましたらコメントしていただけると嬉しいです!
問題出典:https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp230524-07a_01.pdf
AM 1(臨床検査総論)
EDTA-2K 採血管で採取した血漿を用いた場合、測定値が血清より高くなるのはどれか。
- ALP
- Ca
- CRP
- Mg
- TP
解答:5
検査項目と血清・血漿に関する問題です。まず、血清と血漿の違いについて確認しましょう。
血清:採取した血液を放置して得られる上清で、フィブリノゲンを含まない。
血漿:採取した血液を遠心分離して得られる上清で、フィブリノゲンを含む。
両者の大きな違いは、フィブリノゲンを含むかどうかです。フィブリノゲンはタンパク質の1つなので、TP(総タンパク質)の値は 血漿>血清 となります。
他の選択肢も見ていきましょう。今回の問題では、EDTA-2K採血管で採取した血漿を用いています。EDTAは2価の陽イオンをキレートするという性質を持っているため、2価の陽イオンを含む検査項目では低値(偽低値)を示します。したがって、CaとMgの値は 血清>血漿 になります。また、ALPの活性中心にはZnが含まれているため、このZnがキレートされるとALPは活性を失います。ゆえに、ALPの値も 血清>血漿 となります。
また、CRPは血中濃度がかなり低いこともあり、血清と血漿ではほとんど差がないとされています。
AM 2(臨床検査総論)
パニック値として報告すべきなのはどれか。
- K 7.0 mmol/L
- Na 130 mmol/L
- LD 300 U/L
- 血小板数 50 万/μL
- ヘモグロビン 15.0 g/dL
解答:1
パニック値の問題です。パニック値は病院や施設によって異なるので、基準範囲から逸脱したものを選ぶようにしましょう(基準範囲とパニック値の両方を覚えるのは大変なので)。
主な項目の基準範囲とパニック値を表にまとめますが、覚える必要はないので軽く確認だけしてみてください(出やすい項目には青色マーカーしています)。
項目 | 単位 | 基準範囲 | パニック値 |
---|---|---|---|
Na | mEq/L | 135~147 | ①120より低い ②160より高い |
K | mEq/L | 3.6~5.0 | ①2.5より低い ②6.0より高い |
Ca | mg/dL | 8.0~10.3 | ①6.0より低い ②12.0より高い |
Glu | mg/dL | 60~110 | ①50より低い ②350より高い |
CRE | mg/dL | ~1.20 | ①3.0より低い ②8.0より高い |
AST | U/L | 8~35 | 1000より高い |
ALT | U/L | 4~30 | 1000より高い |
LD | U/L | 120~230 | 1000より高い |
Hb | g/dL | 11.5~15.7 | ①5.0より低い ②17.0より高い ③値が3.0以上減少 |
AM 3(臨床検査総論)
クレアチニン(酵素法)の内部精度管理図(xー 管理図)を示す。原因として最も考えられるのはどれか。
- 第 1 試薬と第 2 試薬を逆にして測定した。
- 管理試料を半分の溶解液量で溶解した。
- 標準物質の濃度を 2 倍にして測定した。
- 使用期限が切れた試薬で測定した。
- 未熟な技量のスタッフが測定した。
解答:4
難しそうな問題ですね。選択肢を読んでも分かりにくいので、具体的にイメージして考えてみましょう!
まず、問題のグラフから「段々点が下がっているから、何かが劣化したのかな」というイメージを持ったとしましょう。例えば、消費期限の切れた食材は味がどんどん落ちていきますよね。そんなイメージです(笑)
次にそれぞれの選択肢を見てみます。1は、本来の試薬の順番を逆にして測定した場合です。そうすると、測定値は極端に上もしくは下にずれるだけで、今回のように段々点が下がるとは考えにくいです。
2と3は、同じような意味です。要は、試料を通常より濃い状態で測定したということです。その場合、やはり極端に点がずれそうです。ですがやはり、段々点が下がるとは考えにくいです。
4は、使用期限が切れた試薬を用いて測定した場合です。期限切れ試薬を用いて測定すると、測定値が回数を重ねるごとに上昇ないし下降することが多いです(試薬の性能が段々悪くなるため)。今回の問題と一致しているので、4が最も考えられる原因になります。
5の場合、測定ごとに点が上にぶれたり下にぶれたりするイメージが湧きませんか?そのため、今回のように段々点が下がっていく可能性は低いと考えられます。
このように、選択肢が難しそうなときは具体例やイメージで考えていくと解きやすくなります!少しずつ慣れていけば大丈夫ですよ◎
AM 4(臨床検査総論)
尿沈渣の無染色標本(写真A)及び Sternheimer 染色標本(写真B)を別に示す。この構造物はどれか。
写真A
写真B
- 硝子円柱
- 顆粒円柱
- 脂肪円柱
- 上皮円柱
- 赤血球円柱
解答:4
円柱の写真問題です。それぞれの円柱の定義を確認しておきましょう。
硝子円柱:各種円柱の基質を構成
上皮円柱:尿細管上皮細胞を3個以上含む、または3個以上付着しているもの
赤血球円柱:赤血球を3個以上含むもの
白血球円柱:白血球を3個以上含むもの
脂肪円柱:脂肪顆粒を3個以上含む、または卵円形脂肪体を1個以上含むもの
顆粒円柱:顆粒成分が1/3以上を占めるもの
ろう様円柱:全体または一部が「ろう」のようにみえるもの
著作権の問題もありますので、円柱の写真は各自で必ず確認してください!
また、例えば顆粒成分が1/3以上、かつ尿細管上皮細胞が3個以上含まれている円柱は「顆粒円柱+上皮円柱」となります!複数の成分が同一基質内に含まれる問題も今後出る可能性があるので、確認しておきましょう!
AM 5(臨床検査総論)
人獣共通感染症をきたすのはどれか。
- 蟯 虫
- ズビニ鉤虫
- 三日熱マラリア原虫
- ガンビアトリパノソーマ
- エキノコックス〈多包条虫〉
解答:5
人獣共通感染症の問題です。人獣共通感染症は数が多いので、代表的なものをまとめます。
アニサキス症 エキノコックス症 トキソプラズマ症 クリプトスポリジウム症 日本住血吸虫症
他にもありますが、まずは上記の5つを覚えておきましょう!
AM 6(臨床検査総論)
61 歳の女性。有機農業従事者。腹痛で来院し、虫卵検査を行った。糞便の直接塗抹標本を別に示す。考えられるのはどれか。
- 回虫卵
- 鉤虫卵
- 条虫卵
- 鞭虫卵
- 横川吸虫卵
解答:1
虫卵の写真問題です。写真を見る前に先に問題文を読んでみましょう。
実は写真問題の場合でも、問題文を読むだけで解けることがあります(もちろん写真も見て確認はします)。ヒントになることが多いので、写真問題でも問題文をしっかり読みましょう。
今回のヒントは「有機農業従事者」です。実は日本では1990年以降、回虫の感染例は有機栽培野菜によるものが増えています。覚える必要はもちろんありませんが、このような背景を知っておくと問題を解く際に役に立ちます。
そして写真を確認すると、楕円形で大きさ約50μm黄褐色の虫卵が確認できます。問題文のヒントと写真の両方から、回虫卵であると確認できました。
他の虫卵については、各自で写真を確認してください。写真を見る際は「大きさ・形状・色調」を確認すると良いですよ!
AM 7(臨床検査総論)
コンパニオン検査の特徴について正しいのはどれか。 2 つ選べ。
- 薬局で個人購入できる。
- 疾患の重症度を評価できる。
- 分子標的薬の有効性を予測できる。
- ベッドサイドで結果を評価できる。
- 医薬品の副作用リスクを評価できる
解答:3,5
コンパニオン検査についての問題です。コンパニオン検査(コンパニオン診断)とは、医薬品の効果やその副作用を投薬前に予測するために行われる臨床検査のことです。特に、癌の分子標的薬の効果や副作用の予測に利用されています。
選択肢1の、薬局で個人購入できる医薬品はOTC検査薬と呼ばれ、日本で承認を受けている検査薬は以下の5種類です。たまに問題として出るので是非覚えておきましょう。
尿糖検査薬 尿蛋白検査薬 妊娠検査薬 排卵日予測検査薬 新型コロナウイルス抗原定性検査薬
新型コロナウイルス感染症拡大により新型コロナウイルス抗原定性検査薬が承認され、従来の4種類から5種類に増えました。
また、選択肢2の、疾患の重症度を判定できる代表的なものには、RansonスコアとAPACHE-Ⅱがあります。現時点では無理して覚える必要はないと思いますが、APACHE-Ⅱの方は最近国家試験の選択肢に登場していたので余裕があれば頭に入れておきましょう。ちなみに、Ransonスコアは急性膵炎の重症度・予後予測因子、APACHE-Ⅱは集中治療室入室の際の重症度評価です。
選択肢4の、ベッドサイドで結果を評価できるものにはPOCTがあります。POCTは被検者の傍らで医療従事者が行う検査で、心筋トロポニンT、インフルエンザウイルス抗原や血糖など、様々な項目がPOCTで測定可能です。
AM 8(臨床検査総論)
標準予防策に追加の感染予防策が必要な感染症はどれか。
- 梅 毒
- B 型肝炎
- C 型肝炎
- 帯状疱疹
- HIV 感染症
解答:4
感染対策の問題です。この問題は重要事項が多いので、1個ずつ解説していきますね。
まず、標準予防策(スタンダードプリコーション)とは、誰でも病原体を持っているという概念を基に、すべての患者が何らかの病原体を保有しているものとして対応するという、文字通り感染対策の基本です。
それに加えて、特定の病原体に対しては感染経路別予防策を上乗せして適応します。感染経路別予防策には接触感染予防策、飛沫感染予防策、空気感染予防策の3つがあります。それぞれどの病原体が対象となるのか、具体的にどのような対策を行うのかが非常に良く問われるので、まとめておきます!
感染経路別予防策 | 対象病原体 | 具体的な対策 |
---|---|---|
接触感染予防策 | 耐性菌(MRSAなど) ノロウイルス ロタウイルス アデノウイルス 疥癬 など | 高頻度接触部位(ドアノブなど)を消毒用クロスなどで清拭 |
飛沫感染予防策 | 百日咳菌 肺炎球菌 髄膜炎菌 インフルエンザウイルス ムンプスウイルス 風疹ウイルス など | 患者はサージカルマスク着用 個室管理が望ましいが、出来ない場合は集団隔離を行う |
空気感染予防策 | 結核菌 麻疹ウイルス 水痘ウイルス | 陰圧個室への収容が原則 空調はHEPAフィルターを備えた装置を設置 患者はサージカルマスク、医療従事者や面会者はN95マスクを着用 |
特に、空気感染予防策については対象病原体が3種類しかないので絶対に覚えておきましょう!
AM 9(臨床検査総論)
培養検査で検出された細菌が起炎菌である可能性の最も高い検体はどれか。
- 便
- 喀 痰
- 髄 液
- 自然尿
- 鼻咽頭粘液
解答:3
何やら難しそうな問題文ですね。要は、菌が検出されたらマズイ検体はどれ?ということです(健康な状態であれば菌が存在しない部位=無菌部位)
主な無菌部位から得られる検体には以下の4種類があります。
血液 髄液 胸水 腹水
これらの検体から菌が検出された場合、起炎菌の可能性が高いです。しかし、これらの検体は皮膚からの穿刺により採取するため、皮膚常在菌のコンタミネーション(=汚染菌)が起こる可能性があります。
検出率の高い汚染菌には以下の4種類があります。微生物の分野で出題されることがあるので、覚えておきましょう。
Cutibacterium acnes(アクネ菌)
Bacillus属
Corynebacterium属
Coagulase-negative staphylococci(CNS):コアグラーゼ試験陰性のStaphylococcus属
ここまで押さえることができれば大丈夫ですよ!
AM 10(臨床検査総論)
臥位に比べて座位で採血したときに高値となる血清成分はどれか。
- 尿 酸
- 尿素窒素
- アルブミン
- ナトリウム
- クレアチニン
解答:3
採血体位と検査値の問題です。おそらくみなさんの場合、採血は基本的に坐位で行うことが多いと思います。ですが入院している方はベッドに寝たまま(臥位)で採血を行うことがあるため、体位による影響を受ける検査項目を知っておかなくてはいけません。
安静仰臥位に比べ、坐位や立位では循環血漿量が減少し、血液の濃縮が起こる。
難しく書きましたが、簡単に言えば「座ったり立ったりしたときは、足の方に水分が移動するから、上半身は血が濃くなる」ということです。
では、どのような項目が影響を受けるでしょうか?基本的に、低分子成分(電解質など)であれば水分と共に移動できるので、体位による影響はほとんどありません。しかし、高分子成分(タンパク質など)は流れにくく、移動に時間がかかるので、体位による影響を受けやすいです。
代表的なものを下にまとめましたので参考にしてください。
①仰臥位より坐位や立位の方が高値を示す検査項目
アルブミン 脂質(タンパク質と結合) 酵素 カルシウム(50%がアルブミンと結合)
②採血体位による影響をほとんど受けない検査項目
ナトリウム カリウム クロール 尿素 クレアチニン
国家試験対策としてはもちろん、病院就職後も大事になってくる知識なので必ず押さえておきましょう!
AM 11(臨床検査医学総論)
WPW 症候群に合併しやすいのはどれか。
- 心室頻拍
- 心房細動
- 心房粗動
- 房室ブロック
- 発作性上室頻拍
解答:5
心電図の問題です。といっても、今回写真はありません。まずは、心電図分野において代表的な疾患の特徴をまとめます(波形は各自で確認してください)。
疾患名 | 波形の特徴 | 備考 |
---|---|---|
心室頻拍(VT) | 幅広いQRS波が出現 | 心室細動に移行することがある |
心房細動(AF) | 細動波(f波)が出現 RR間隔不整(絶対不整脈) | 心原性塞栓症の原因となる |
心房粗動(AFL) | 鋸歯状波(F波)が出現 | |
房室ブロック(A-V block) | PR時間が0.24秒以上(Ⅰ度) PR時間漸増後QRS波欠落(Ⅱ度:ウェンケバッハ型) PR時間一定で突然QRS波欠落(Ⅱ度:モビッツ型 P波とQRS波が無関係に出現(Ⅲ度) | |
発作性上室頻拍(PSVT) | 発作中のQRS波は正常、もしくは正常に類似 | WPW症候群に伴う場合が約半分を占める |
心房期外収縮(APC) | 異所性P波の早期出現 | |
心室期外収縮(PVC) | 幅広いQRS波の早期出現 T波はQRS波と逆の方向を向く | Lownの分類がある |
洞不全症候群(SSS) | PP間隔延長(洞停止・洞房ブロック) 洞徐脈や洞停止・洞房ブロックに伴って心不全や脳虚血が伴う(洞不全症候群) | Rubenstein分類がある |
脚ブロック | V1~2でrsR’パターン(右脚ブロック) V1~2で幅広いS波(左脚ブロック) | |
WPW症候群 | Δ波 | ケント束が存在 V1のQRS波形によりA型、B型、C型に分けられる |
Brugada症候群 | V1~3の右脚ブロック様パターンとST上昇 | 突然死することがある |
心筋梗塞 | ST上昇(冠閉塞) ST低下(冠潅流が残存) | 梗塞部位により異常波形出現部位が異なる |
特に、脚ブロック、房室ブロック、心筋梗塞の問題は非常によく出るので、波形とこのまとめを照らし合わせながら対策していきましょう!
AM 12(臨床検査医学総論)
BRCA1/2 の病的変異が検出されるのはどれか。
- Lynch 症候群
- 家族性大腸腺腫症
- Li-Fraumeni 症候群
- von Hippel-Lindau 病
- 遺伝性乳がん卵巣がん症候群
解答:5
遺伝子変異と疾患の問題です。これは正直覚えるしかありません。もちろん理論はありますが、かなり専門的になってしまうので詳しくは省略します(興味がある方はぜひ調べてみてください、面白いですよ!)。
ここでは代表的な遺伝子変異と疾患をまとめておきます。
遺伝子変異 | 遺伝子の種類 | 疾患名 |
---|---|---|
p53 | がん抑制遺伝子 | Li-Fraumeni症候群 |
APC | がん抑制遺伝子 | 家族性大腸腺腫症 |
PTEN | がん抑制遺伝子 | Cowden病 |
RB | がん抑制遺伝子 | 網膜芽細胞腫 |
VHL | がん抑制遺伝子 | von Hippel-Lindau病 |
BRCA1/2 | がん抑制遺伝子 | 家族性乳がん卵巣がん症候群 |
MSH2 | がん抑制遺伝子 | Lynch症候群 |
BRAF | がん遺伝子 | 悪性黒色腫(メラノーマ) |
KIT | がん遺伝子 | 消化管間質腫瘍 |
RET | がん遺伝子 | 多発性内分泌腺腫症Ⅱ型 |
特に、青色マーカーの部分は出題されやすいので押さえておきましょう。
ここで、がん遺伝子とがん抑制遺伝子について簡単にお話しします。少し専門的なので、興味のある方だけ読んでみてくださいね。
がん遺伝子は細胞増殖を促進する機能をもつ遺伝子です。ヒトは母親と父親から1本ずつ遺伝子を受け取りますが、受け取った遺伝子ががん遺伝子の場合、そのどちらかが過剰に働くという変異を獲得した場合、過剰な細胞増殖を引き起こしてしまいます(細胞のがん化)。
対して、、がん抑制遺伝子は細胞増殖を抑制する遺伝子です。もし、受け取った遺伝子ががん抑制遺伝子の場合、どちらかが機能を欠失(1ヒット目)すると細胞増殖に抑制がかからなくなり細胞増殖が活発になりそうですよね。しかし、がん抑制遺伝子の場合、もう片方の生き残った遺伝子が頑張ってくれるので、細胞増殖は正常です。しかし、がん抑制遺伝子が両方とも欠失(2ヒット目)した場合、細胞増殖に歯止めがかからなくなります。これを2ヒット説と言います。
AM 13(臨床検査医学総論)
汎血球減少症を呈するのはどれか。 2 つ選べ。
- 腎性貧血
- 鉄欠乏性貧血
- 巨赤芽球性貧血
- 再生不良性貧血
- 自己免疫性溶血性貧血
解答:3,4
汎血球減少症の問題です。汎血球減少とは、2系統以上の血球減少(例えば、赤血球と白血球の数が減少)を認める疾患のことです。
汎血球減少症をきたす疾患はたくさんありますが、ただ暗記するのではなく、それぞれの病態も含めて考えると記憶に残りやすくなります。
では、選択肢を見てみましょう。選択肢1の腎性貧血は、腎臓で産生されるエリスロポエチンの産生低下による貧血です。そのため赤血球数のみ減少します。
選択肢2は、赤血球合成に必要な鉄の不足による貧血です。したがって、赤血球数のみが減少します。
対して選択肢3の巨赤芽球性貧血は、DNA合成に必要なビタミンB12または葉酸の欠乏による貧血です。そのため、DNA(核)をもつ白血球数は減少します。赤血球、血小板自体にはDNA(核)はありませんが、その前駆細胞(赤芽球や巨核球など)にはDNAが存在しています。そのため赤血球、血小板の両者ともうまく成熟できないため、結果として数が減少します。したがって、2系統以上の血球減少を認める汎血球減少症に分類されます。
選択肢4の再生不良性貧血は、造血幹細胞数の減少による貧血です。造血幹細胞は赤血球、白血球、血小板の元となる細胞なので、造血幹細胞数の減少は赤血球数、白血球数、血小板数全ての減少に繋がります。そのため汎血球減少症に分類されます。
選択肢5の自己免疫性溶血性貧血は、赤血球膜上の抗原に対する自己抗体により赤血球が破壊されることで生じる貧血です。抗原抗体反応は赤血球で起こるため、白血球数、血小板数に影響はありません。
疾患名 | 貧血の種類 | 病態 |
---|---|---|
腎性貧血 | 正球性正色素性貧血 | エリスロポエチン産生低下により赤血球が成熟できず貧血をきたす |
鉄欠乏性貧血(IDA) | 小球性低色素性貧血 | 鉄の欠乏によりHb合成が障害され貧血をきたす |
巨赤芽球性貧血 | 大球性正色素性貧血 | ビタミンB12または葉酸欠乏によりDNA合成が障害され貧血をきたす |
再生不良性貧血(AA) | 正球性正色素性貧血 | 造血幹細胞数の減少により貧血をきたす |
自己免疫性溶血性貧血(AIHA) | 正球性正色素性貧血 | 赤血球に対する自己抗体により赤血球が溶血し貧血をきたす |
今回の選択肢に挙げられている疾患の病態を簡単にまとめておきました!詳しい説明は血液の分野でやりたいと思っていますので、もう少しお待ちください!
AM 14(臨床検査医学総論)
末期慢性腎不全で認められるのはどれか。 2 つ選べ。
- 低リン血症
- 低カリウム血症
- 低カルシウム血症
- 低ナトリウム血症
- 低マグネシウム血症
解答:3,4
腎不全と電解質の問題です。何回も出題されているため非常に重要ですが、難しくないのでサクッと終わらせましょう。
腎臓では、老廃物排泄、電解質・酸塩基平衡調節、エリスロポエチン産生などの様々な機能を果たしています。中でも電解質は再吸収と排泄を用いて以下の様に調節されています。
ほとんどの電解質は腎臓において再吸収と排泄の両方を行うことで体内濃度を維持していますが、再吸収または排泄に偏りがある物質が存在します。
主に再吸収される電解質:Na Ca
主に排泄される電解質:K P Mg
腎臓はNaとCaを通常再吸収していますが、腎不全になるとその機能が低下するので血中Na、Ca濃度は低下します。逆に、通常排泄されているK、P、Mgが、腎不全になるとうまく排泄が出来なくなるため血中濃度は上昇します。
腎不全の問題はクレアチニンや尿素などの選択肢も登場しやすいので、臨床化学の投稿で改めて解説しますね!
AM 15(臨床検査医学総論)
メタボリックシンドロームの診断基準に含まれるのはどれか。 2 つ選べ。
- 総コレステロール 220 mg/dL 以上
- トリグリセライド 150 mg/dL 以上
- HDL コレステロール 40 mg/dL 未満
- LDL コレステロール 140 mg/dL 以上
- Non-HDL コレステロール 170 mg/dL 以上
解答:2,3
メタボリックシンドローム診断基準の問題です。正直言って暗記するしかありません(笑)
♂:ウエスト≧85㎝ ♀:ウエスト≧90㎝
上記に加え、下記のうち2項目以上
トリグリセライド≧150mg/dl かつ/または HDL<40mg/dl
収縮期血圧≧130mmHg かつ/または 拡張期血圧≧85mmHg
空腹時血糖値≧110mg/dl
未満と以上の違い、ウエスト径は男性と女性で値が異なるので、注意して覚えましょう。
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