第69回 臨床検査技師国家試験 過去問解説AM(59~67)です。間違いや要望等ありましたらコメントしていただけると嬉しいです!
問題出典:https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp230524-07a_01.pdf
AM 59(血液検査学)
正しいのはどれか。
- B リンパ球は胸腺で成熟する。
- 髄外造血は胎生期に認められる。
- 免疫グロブリンは肝臓で合成される。
- エリスロポエチンは骨髄で産生される。
- トロンボポエチンは脾臓で産生される。
解答:2
血液学の基礎問題です。
まず、血液細胞は赤血球、白血球、血小板に分けられます。白血球はさらに顆粒球、リンパ球、単球に分かれ、顆粒球には好酸球、好中球、好塩基球が属しています。それぞれの細胞は成熟場所や成熟過程、成熟環境が異なります。
| 種類 | 主要造血因子 | 造血因子産生細胞 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 赤血球 | エリスロポエチン(EPO) | 腎細胞 | 胎生期は卵黄嚢→肝臓・脾臓→骨髄の順で造血が活発になる |
| 好酸球 | IL-5 | T細胞 | |
| 好中球 | 顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF) | マクロファージ 骨髄間質細胞 | |
| 好塩基球 | IL-3 | T細胞 | |
| 単球 | 単球マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF) | マクロファージ 骨髄間質細胞 | |
| T細胞 | IL-2 | T細胞 | 胸腺で成熟する |
| B細胞 | IL-2 | T細胞 | IL-6により形質細胞に分化 |
| 血小板 | トロンボポエチン(TPO) | 肝細胞 |
ちなみに、免疫グロブリン(抗体)を産生するのは形質細胞(B細胞)です。
また、健常人では造血は骨髄・リンパ節にほぼ限られます。しかし、病的状態では胎生期に造血が行われていた肝臓・脾臓・リンパ節などで造血が行われることがあり、これを髄外造血といいます。
AM 60(血液検査学)
血液塗抹標本の染色法について誤っているのはどれか。
- 正常赤芽球は PAS 染色で陰性となる。
- 鉄染色は鉄芽球性貧血の診断に有用である。
- May-Giemsa 染色は細胞形態の観察に適する。
- 成熟好中球はペルオキシダーゼ染色で陽性となる。
- 特異的エステラーゼ染色はフッ化ナトリウムで阻害される。
解答:5
血液塗抹標本の染色法に関する問題です。
主に5種類あるので、表としてまとめておきます!
| 染色法 | 目的 | 試薬 | 結果 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ペルオキシダーゼ染色 | 顆粒球系マーカー | α-ナフトール 3%過酸化水素水 ブリリアントクレシル青 | 顆粒球系(+) その他(±)~(-) | 骨髄芽球は(-) |
| 好中球アルカリホスファターゼ(NAP)染色 | NAPスコア算出 | ナフトールAS-MXホスフェートNa塩 | 平均NAPスコアは♂:264 ♀:285 | 慢性骨髄性白血病(CML)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)で低値 |
| 非特異的エステラーゼ染色 | 単球系細胞の検出 | α-ナフチルブチレート α-ナフチルアセテート | 単球系で(+) | 単球の非特異的エステラーゼはフッ化ナトリウム阻害試験により陰性化 |
| 特異的エステラーゼ染色 | 好中球系細胞の検出 | ナフトールAS-Dクロロアセテート | 好中球系で(+) | |
| PAS反応 | グリコーゲン証明 | 1%過ヨウ素酸 シッフ試薬 亜硫酸水 | 陽性物質がグリコーゲンの場合、アミラーゼ消化試験により陰性化 | |
| 鉄染色 | Fe3+の証明 | 2%フェロシアン化カリウム 2%塩酸 | 鉄芽球で(+) | 鉄芽球性貧血、骨髄異形成症候群(MDS)で陽性 |
AM 61(血液検査学)
赤血球沈降速度が遅延するのはどれか。 2 つ選べ。
- 関節リウマチ
- 真性赤血球増加症
- ネフローゼ症候群
- 原発性マクログロブリン血症
- 先天性無フィブリノゲン血症
解答:2,5
赤血球沈降速度の問題です。
通常、赤血球同士はゼータ電位の反発によって凝集しにくくなっています。しかし、血漿中にγグロブリンやフィブリノゲンなどの陽性荷電物質が増加すると、陰性荷電(シアル酸による)している赤血球同士の反発が抑制されます。これにより凝集が亢進し、赤沈促進となります。反対に、陰性荷電しているアルブミンや赤血球の増加では赤沈は遅延します。
この知識を基にそれぞれの選択肢を見ていきましょう。まず1の関節リウマチは、関節に起こる自己免疫疾患であり、リウマトイド因子と呼ばれる自己抗体が出現します。抗体=γグロブリンなので、陽性荷電物質の増加により赤沈は促進します。
2の真性赤血球増加症は、その名の通り赤血球が増加する疾患です。陰性荷電している赤血球の増加により赤沈は遅延します。
3のネフローゼ症候群は、低アルブミン血症をきたす疾患です。アルブミンは陰性荷電しているためアルブミンの増加は赤沈の遅延を引き起こしますが、アルブミンの減少は陰性荷電物質の減少を意味するため、正常と比べて赤沈は促進します。
4の原発性マクログロブリン血症は、IgMの増加をきたす疾患です。そのためγグロブリン増加により赤沈は促進します。
5の先天性無フィブリノゲン血症は、その名の通りフィブリノゲンが存在しない疾患です。陽性荷電物質であるフィブリノゲンの増加は赤沈促進を引き起こしますが、フィブリノゲン減少は赤沈を遅延させます。
以下に赤血球沈降速度の促進・遅延に関する疾患(頻出のもの)をまとめますが、上記のように疾患の原因が分かれば暗記は必要ありません!
| 赤沈促進 | 赤沈遅延 |
|---|---|
| 結核 肺炎 関節リウマチ 心筋梗塞 SLE マクログロブリン血症 多発性骨髄腫 ネフローゼ症候群 | 赤血球増加症 DIC 肝硬変 低・無フィブリノゲン血症 |
基本的には、炎症性疾患(結核、肺炎、SLEなど)であればフィブリノゲンが増加するため赤沈は促進します。
AM 62(血液検査学)
自動血球計数測定値の誤差要因とその影響の組合せで正しいのはどれか。 2 つ選べ。
- 寒冷凝集素―赤血球数偽低値
- 巨大血小板―血小板数偽高値
- 破砕赤血球―血小板数偽低値
- 有核赤血球―白血球数偽低値
- クリオグロブリン―白血球数偽高値
解答:1,5
自動血球計数装置に関する問題です。この問題は臨床でも重要になってくるので、いずれ1つの投稿にまとめます。
これは暗記することもできますが、少し考えてみましょう!
例えば、選択肢1の寒冷凝集素は、赤血球が沢山凝集して1つの赤血球として認識されてしまいます。そのため、赤血球数偽低値となります。
選択肢2の巨大血小板では、大きさが普通の血小板より大きいため正しくカウントされません。よって、血小板数偽低値をきたします。
選択肢3の破砕赤血球は、赤血球の破片が血小板と誤認識されて血小板数偽高値を示します。
選択肢4の有核赤血球は、本来核が無いはずの赤血球に核があるため、白血球としてカウントされてしまいます。そのため、白血球数偽高値に繋がります。
選択肢5のクリオグロブリンは、赤血球や血小板などの細胞が凝集することで白血球と同じくらいの大きさとなり、白血球数偽高値を示します。
このように考えることで丸暗記が少し減ります!一応、以下にまとめておきますね。
| 測定項目 | 増加(偽高値) | 減少(偽低値) |
|---|---|---|
| RBC(赤血球) | クリオグロブリン クリオフィブリノゲン 白血球数5万以上 | 寒冷凝集素 |
| WBC(白血球) | クリオグロブリン クリオフィブリノゲン 有核赤血球 | 白血球凝集 |
| PLT(血小板) | クリオグロブリン クリオフィブリノゲン 破砕赤血球などの小赤血球 | 巨大血小板 血小板サテライト形成 |
| Hb | 白血球数5万以上 | 凝集 |
| Ht | 巨大血小板 高血糖(>500mg/dl) | 凝集 |
| MCV | クリオグロブリン クリオフィブリノゲン | |
| MCH | 白血球数5万以上 | |
| MCHC | 寒冷凝集素 |
MCVやMCHCなどは計算式を考えると、暗記しなくて済みますよ!
AM 63(血液検査学)
引きガラス(ウェッジ)法での末梢血液塗抹標本の作製について誤っているのはどれか。
- 大型細胞は引き終わりに分布しやすい。
- 塗抹後は速やかに温風で十分に乾燥させる。
- 塗抹の厚さは引きガラスの角度に影響される。
- 塗抹スピードが速いと塗抹面の長さは短くなる。
- 血球形態への影響を避けるため採血後速やかに作製する。
解答:2
末梢血塗抹標本に関する問題です。末梢血塗抹標本には薄層と厚層がありますが、今回は前者に絞って解説していきます。
薄層塗抹標本作製法として主にウェッジ(引きガラス)法やスピナー(遠心)法があります。どちらの方法でも、採血後なるべく早く塗抹します(時間経過による血球形態変化の影響を最小限にするため)。
具体的な工程としては、スライドガラス上に血液を滴下し、引きガラスを約30度くらいの角度で塗抹します。この時、引きガラス-スライドガラス間の角度が小さいと薄くて長い標本、角度が大きいと厚くて短い標本となります。また、引きガラスの速度が遅いと薄くて長い標本、速度が速いと厚くて短い標本になります。
塗抹終了後は冷風乾燥します。
また、顆粒球や単球は引き終わりや辺縁部に集まりやすく、リンパ球は中央部に多く分布する傾向にあります。
ウエッジ法は一度実際に手を動かしてみると理解できる点が増えると思います!
AM 64(血液検査学)
(A)

(B)

末梢血細胞の May-Giemsa 染色標本(A)とフローサイトメトリの所見(B)を別に示す。考えられるのはどれか。
- 急性単球性白血病
- 急性リンパ性白血病
- 成人 T 細胞白血病
- 慢性骨髄単球性白血病
- 慢性リンパ性白血病
解答:5
染色標本とフローサイトメトリの結果を組み合わせた臨床的(実践的)な問題です。
まず、May-Giemsa染色標本を見ます。赤血球より少し大きめで、核が大きい細胞が2個観察されます(リンパ球かな?)。少なくともマクロファージや顆粒球系ではなさそうですよね。
次に、フローサイトメトリの結果を見ます。それぞれ横軸・縦軸に対応しているものを確認しましょう。左上の結果から、CD20陽性細胞増加(66.6%)が見られますね。また、右上の結果からCD5陽性かつCD23陽性細胞の増加(78.8%)が認められます。下段の2つの検査結果からもCD19陽性細胞の増加がみられます。
この時点で慢性リンパ性白血病(CLL)と判断できます。CLLはCD5・19・20・23陽性リンパ球増加が特徴的です。
主要免疫細胞のCD抗原を以下にまとめます。
B細胞:CD10・CD19・CD20・CD22
T細胞:CD2・CD3・CD4・CD5・CD8
NK細胞:CD16・CD56
顆粒球:CD13・CD33
単球:CD14
マクロファージ:CD68・CD163
ランゲルハンス細胞:CD1a
巨核球:CD41・CD42・CD61
今回のような問題は、染色標本のみで分からない(ATL:flower cellなどは分かりますよね!)場合はフローサイトメトリの結果も読み取って判断しましょう!
AM 65(血液検査学)
骨髄芽球に当てはまるのはどれか。 2 つ選べ。
- 核小体を認める。
- N/C 比が小さい。
- 二次顆粒を認める。
- 細胞質は好塩基性が強い。
- 核クロマチン構造が粗剛である。
解答:1,4
骨髄芽球に関する問題です。
好中球は、骨髄芽球→前骨髄球→骨髄球→後骨髄球→桿状核球→分葉核球の順に分化します。それぞれに特徴があるのでまとめていきます!
| 細胞 | 特徴 |
|---|---|
| 骨髄芽球 | 直径12~20㎛で、クロマチンは繊細網状 2~5個の核小体を含む 細胞質は好塩基性が強い N/C比が大きく、顆粒は見られない |
| 前骨髄球 | 好中球系成熟過程で最大 核周明庭を認める アズール顆粒が見られるようになり、ペルオキシダーゼ染色陽性となる |
| 骨髄球 | クロマチンは粗大で、核小体は見られない アズール顆粒は減少または消失し、二次顆粒が現れてアルカリホスファターゼ陽性となる |
| 後骨髄球 | 腎臓形の核を持つ 細胞質はピンク色 |
| 桿状核球 | ウインナーソーセージ形の核を持つ |
| 分葉核球 | 直径12~15㎛ ミエロペルオキシダーゼを有し、ペルオキシダーゼ染色陽性 非特異的エステラーゼ染色(α-ナフチルブチレート、α-ナフチルアセテート)陰性 特異的エステラーゼ染色(ナフトールAS-Dクロロアセテート)陽性 ズダン黒B、PAS反応もそれぞれ陽性を示す |
特に顆粒や染色に関する問題が頻出なので押さえておきましょう!
AM 66(血液検査学)
フィブリノゲンについて正しいのはどれか。 2 つ選べ。
- 急性炎症で上昇する。
- 血中で最も高濃度な蛋白質である。
- トロンビン時間法により測定される。
- 3 種類のペプチド鎖が 3 量体になった構造である。
- プラスミンで分解されると D ダイマーが遊離する。
解答:1,3
フィブリノゲンの問題です。
フィブリノゲンは、Aα、Bβ、γという3本のポリペプチド鎖がS-S結合した2量体です。トロンビンの作用によりフィブリノペプタイドA(FPA)が遊離し、フィブリン中間体となります。その後さらにフィブリノペプタイドBが遊離することでフィブリンモノマーとなり、2分子のフィブリノゲンと会合して可溶性フィブリンモノマー複合体(SFMC)として存在します。
基準範囲は200~400mg/dlで、急性炎症で上昇し(急性期蛋白質の1つ)、DICなどで低下します。測定はトロンビン時間法で行います。
ちなみに、選択肢2の、血中で最も高濃度なタンパク質はアルブミンです。また、選択肢5の、プラスミンで分解されるとDダイマーが遊離するのはフィブリンです。
- 3本のペプチド鎖からなる2量体
- 基準範囲は200~400mg/dl
- 急性期蛋白質の1つ
- 測定法はトロンビン時間法
AM 67(血液検査学)
正しいのはどれか。
- ヘムには 3 価の鉄原子が含まれる。
- 鉄は血漿中でトランスフェリンに結合している。
- 赤血球における ATP 供給はクエン酸回路による。
- ヘモグロビンの酸素飽和性は pH が上昇すると減少する。
- 健常成人のヘモグロビンの約 50%をヘモグロビン A2 が占める。
解答:2
赤血球に関する問題です。
正常赤血球は中央がへこんだ円盤状の形態をしており、直径は7~8㎛です。赤血球の1/3をヘモグロビン(Hb)が占めています。成人のHbは約96%がHbAであり、残りをHbA2(2.5%)とHbF(1%以下)が占めています。HbFはアルカリ抵抗性が強く、胎児期には55~95%を占めています。
Hbと酸素の親和性には次のような特徴があります(酸素解離曲線)。

Hbは、4分子のヘムと1分子のグロビンを含んでいます。ヘムにはFe2+が存在し、このFe2+が酸素1分子と結合することで酸素を運搬します。
ヘムは、赤芽球の細胞質とミトコンドリアで作られます。具体的には、ビタミンB6を補酵素としてグリシンとサクシニルCoAからδ-アミノレブリン酸が合成されます。その後様々な過程を経てプロトポルフィリンⅨとなり、その中央に血漿中でトランスフェリンと結合している鉄イオンがミトコンドリア内に取り込まれて結合し、ヘムが完成します。
ちなみに、赤血球にはミトコンドリアが存在せず、90%をエムデン・マイヤーホフ経路、残りはペントースリン酸回路からATPを得ています。


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