第70回 臨床検査技師国家試験 過去問解説AM(59~67)です。間違いや要望等ありましたらコメントしていただけると嬉しいです!
問題出典:https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp240424-07a_01.pdf
AM 59(血液検査学)
播種性血管内凝固〈DIC〉で上昇するのはどれか。
- PIVKA-Ⅱ
- D-ダイマー
- プロテイン C
- アンチトロンビン
- プラスミンインヒビター
解答:2
DICに関する問題です。
- PIVKA-Ⅱ → DICとの関連は薄く、肝細胞癌のマーカーとして用いられる
- D-ダイマー → ○(二次線溶の亢進)
- プロテイン C → 低値(凝固系活性化により枯渇)
- アンチトロンビン → 低値(凝固系活性化により枯渇)
- プラスミンインヒビター → 低値(線溶系活性化により枯渇)
播種性血管内凝固(DIC)は様々な原因により凝固系が過活性化し、血栓が多発する疾患です。凝固系の過活性化に伴い線溶系も活性化します。
凝固活性化に伴い血小板数減少、APTT・PT延長、フィブリノゲン減少を認めます。抗凝固因子であるアンチトロンビンやプロテインCも凝固系を抑えるため消費性に減少します。
多発した血栓を溶かすために線溶系も活性化し、プラスミンを抑えるプラスミンインヒビターは消費性に低下します。
ちなみに、PIVKA-ⅡとはビタミンK欠乏時に産生される異常血液凝固第Ⅱ因子で、肝機能障害やビタミンK欠乏で上昇します。
AM 60(血液検査学)
末梢血の好中球数が増加するのはどれか。
- アルコール中毒
- 伝染性単核球症
- アレルギー性鼻炎
- 急性骨髄性白血病
- 副腎皮質ステロイド薬投与
解答:5
好中球数に関する問題です。
- アルコール中毒 → 好中球減少
- 伝染性単核球症 → リンパ球増加
- アレルギー性鼻炎 → 好酸球増加
- 急性骨髄性白血病 → 好中球減少
- 副腎皮質ステロイド薬投与 → ○(好中球増加)
1.アルコール中毒では好中球機能障害や骨髄顆粒球の減少に伴い、好中球数が減少することが知られています。
2.伝染性単核球症ではCD8陽性異型Tリンパ球が出現し、リンパ球増加を示します。
3.アレルギー性鼻炎では、アレルゲンを認識したTh2細胞が分泌するIL-5により好酸球増加を示します。
4.急性骨髄性白血病では、異常芽球が正常細胞の増殖を妨げるため好中球数は減少します。
5.副腎皮質ステロイド薬投与では、骨髄内の成熟好中球プールから末梢血液中へ好中球を誘導する作用により好中球増加を示します。
AM 61(血液検査学)
アミノ基転移酵素活性を有するのはどれか。
- トロンビン
- プラスミン
- 活性化第Ⅹ因子
- 活性化第ⅩⅢ因子
- 活性化プロテイン C
解答:4
アミノ基転移活性に関する問題です。
- トロンビン → 蛋白分解酵素
- プラスミン → 蛋白分解酵素
- 活性化第Ⅹ因子 → 蛋白分解酵素
- 活性化第ⅩⅢ因子 → トランスグルタミナーゼ
- 活性化プロテイン C → 蛋白分解酵素
血液凝固因子のうち、トロンビン・活性化第Ⅶ因子・活性化第Ⅸ因子・活性化第Ⅹ因子・活性化第Ⅺ因子・活性化第Ⅻ因子は蛋白分解酵素(プロテアーゼ)に分類されます。
活性化第ⅩⅢ因子はアミノ基転移酵素(トランスグルタミナーゼ)に分類され、組織因子・カルシウム・活性化第Ⅷ因子は補助因子に分類されます。
AM 62(血液検査学)
赤血球に関する記載で正しいのはどれか。
- エリスロポエチンは肝臓で産生される。
- 前赤芽球は正染性赤芽球よりも大きい。
- 健常者の赤血球寿命は約 80 日である。
- 網赤血球は成熟赤血球よりも小さい。
- 老化につれて赤血球変形能が高まる。
解答:2
赤血球に関する問題です。
- エリスロポエチンは
肝臓で産生される。 → 腎臓(傍糸球体細胞)で産生 - 前赤芽球は正染性赤芽球よりも大きい。 → ○(赤芽球の中では最大)
- 健常者の赤血球寿命は約
80日である。 → 寿命は約120日 - 網赤血球は成熟赤血球よりも
小さい。 → 大きい - 老化につれて赤血球変形能が
高まる。 → 低下する(代謝酵素の減少によりATPが減る)
赤血球は直径7~8μmで、円板上の形態をしています。核は無く、酸素運搬のためにヘモグロビン(Hb)を含んでいます。寿命は約120日です。
腎臓で産生されるエリスロポエチン等により 前赤芽球(最大)→好塩基性赤芽球→多染性赤芽球(Hb合成開始)→正染性赤芽球→網赤血球(成熟赤血球より大きい)→赤血球 の順に成熟します。
赤血球が古くなると代謝酵素減少によりATPが減り、変形能が低下して壊れやすくなります(古い赤血球は主に脾臓で捕捉・破壊)。
AM 63(血液検査学)
骨髄塗抹標本で正しいのはどれか。
- 正常赤芽球は PAS 染色陽性である。
- 健常成人骨髄像では鉄芽球が認められない。
- 前骨髄球はペルオキシダーゼ染色陰性である。
- 健常成人骨髄像では M/E 比は 10 以上である。
- 単球のエステラーゼ反応はフッ化ナトリウムによって阻害される。
解答:5
骨髄塗抹標本の問題です。
- 正常赤芽球は PAS 染色
陽性である。 → 陰性 - 健常成人骨髄像では
鉄芽球が認められない。 → 環状鉄芽球 - 前骨髄球はペルオキシダーゼ染色
陰性である。 → 陽性 - 健常成人骨髄像では M/E 比は
10 以上である。 → 1~3 - 単球のエステラーゼ反応はフッ化ナトリウムによって阻害される。 → ○
PAS染色ではグリコーゲンが陽性となります。好中球系は成熟に伴い強陽性を示しますが、健常者の赤芽球はPAS染色陰性です。しかし、赤白血病(M6)や骨髄異形成症候群(MDS)ではしばしばPAS染色陽性の異常赤芽球を認めます。
健常成人骨髄像では鉄芽球を認めますが、環状鉄芽球はみられません。しかし鉄芽球性貧血や骨髄異形成症候群(MDS)では環状鉄芽球がみられます。
ペルオキシダーゼ染色は、急性白血病のFAB分類に不可欠な特殊染色です。好中球系は陽性を示し、単球系は弱陽性、リンパ球系・赤芽球系・血小板系は陰性です。好酸球は強陽性を示し、シアン化カリウム耐性を示します。
エステラーゼ染色は、主に好中球系で認められる特異的エステラーゼと単球・血小板・リンパ系で認められる非特異的エステラーゼを区別します。単球のエステラーゼはフッ化ナトリウムにより阻害されます。
M/E比とは、骨髄において骨髄球系細胞(Myeloid)と赤芽球系細胞(Erythroid)の比率を示す指標で、基準範囲は1.1~3.5です。この値が高いと骨髄球系過形成または赤芽球系低形成、低いと骨髄球系低形成または赤芽球系過形成を示します。
AM 64(血液検査学)

自動血球計数器法で赤血球ヒストグラムを別に示す。赤血球 125 万/µL、Hb 7.5 g/dL、Ht 15%で矢印の所見が認められた。可能性があるのはどれか。
- 高血糖
- 巨大血小板
- 破砕赤血球
- 寒冷凝集素症
- 高ビリルビン血症
解答:4
赤血球ヒストグラムに関する問題です。
- 高血糖 → Ht・MCV偽高値
- 巨大血小板 → RBC・Ht偽高値、MCV偽低値
- 破砕赤血球 → RBC・Hb・Ht偽低値
- 寒冷凝集素症 → ○(RBC・Hb・Ht偽低値、MCV・MCHC偽高値)
- 高ビリルビン血症 → Hb偽高値
データから、RBC・Hb・Htの全てが低値であることが分かります。この時点で選択肢を絞れますが、RBC数・Hb濃度・Ht値が与えられている時はMCV(平均赤血球容積)やMCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)も計算してみましょう。
MCV=(15/1.25)×10=120(高値)
MCHC=(7.5/15)×100=50(高値)
以上より、RBC・Hb・Ht低値、MCV・MCHC高値を示すことが分かりました。では選択肢を1つずつ見ていきます。
1.高血糖では、血漿から赤血球内へ水分が移動し、赤血球が膨張します。
- MCV: 赤血球の膨張により、自動血球計数器は赤血球を実際より大きく測定します。したがってMCVは偽高値を示します。
- MCHC: MCHCはHb/Htで計算されます。高血糖の場合Hbは変わりませんが、MCVが偽高値になることでHt(=RBC×MCV)も偽高値になります。分母が大きくなるためMCHCは偽低値を示します。
- 結論: 高血糖はMCVを上昇させますが、MCHCは低下させます。
2.巨大血小板は間違って赤血球としてカウント(自動血球計数器は粒子の大きさで細胞を分類)され、RBCは偽高値を示します。本来の赤血球数よりも多く見積もられるため、当然Ht値も偽高値を示します。
- MCV: 巨大血小板が赤血球としてカウントされても、赤血球の平均サイズはほとんど影響を受けません。
- MCHC: MCHCが50 g/dLという極端な異常値を示す直接的なメカニズムにはなりません。
- 結論: 巨大血小板の存在は、MCVの著しい高値とMCHCの異常高値を同時に引き起こすことはないと考えられます。
3.破砕赤血球は、破砕した赤血球が間違って血小板としてカウントされます。また、破砕しているためHb濃度・Ht値共に低くなります。
- MCV: 破砕赤血球は正常な赤血球よりはるかに小さいため、これらが多数存在すると、赤血球の平均サイズであるMCVは著しく低下します。
- MCHC: 赤血球が断片化してもヘモグロビン濃度が大きく変わるわけではないため、MCHCに著変はありません。
- 結論: 破砕赤血球ではMCVが低下するため今回のデータとは真逆の所見となり、明確に否定できます。また、ヒストグラムも右側ではなく左側に裾を引く形になります。
4.寒冷凝集素症では、検体が室温まで冷却される過程で、自己抗体である寒冷凝集素(主にIgM)が赤血球に結合し、赤血球を凝集させます。その結果、赤血球数(RBC)は偽低値(実際より少なく測定)となります。Hbは測定前に溶血させるため、凝集の影響を受けません。HtはRBCとMCVから算出される(Ht=RBC×MCV)ため偽低値となります。
- ヒストグラム所見: 赤血球ヒストグラムでは、正常な赤血球のピークとは別に、容積の大きい側(右側)に凝集塊を示す裾引きや異常なピークが認められます。問題の矢印はこの所見を指していると考えられます。
- MCV:塊を一つの大きな粒子として測定されるため偽高値を示します。
- MCHC:Hb/Htで求められますが、分子が正常、分母が偽低値となるため偽高値を示します。
この現象は、検体を37℃に加温して再測定することで凝集が解離し、データが補正されることで確認できます。
5.高ビリルビン血症ではHb偽高値を示します。なぜなら自動血球計数器でHbを測定する際、多くは溶血させた検体の吸光度を測定しますが、血漿がビリルビンで強く着色されていると、それが吸光度測定を妨害し、光を多く吸収しているように見えてしまうからです。
- MCV: これはHb測定系のアーチファクトであり、赤血球のサイズに影響を与えません。
- MCHC: MCHCはHb/Htで計算されます。分子のHbが偽高値に測定されるため、結果としてMCHCも偽高値を示すことがあります。
- 結論: 高ビリルビン血症はMCHCを偽高値にする可能性はありますが、MCVには影響を与えません。
以上より、4.寒冷凝集素症が答えになります。
AM 65(血液検査学)

シリンジで採血を行い、止血処置の間にしばらく立てて静置した。その状況の写真を示す。そのままシリンジを転倒混和せず、複数の血算用の試験管に分注した。最後の試験管に比べて最初の試験管で測定値が大きくなる可能性の最も高いのはどれか。
- 単球数
- 血小板数
- 好中球数
- 赤血球数
- リンパ球数
解答:4
実際の業務に近い問題です。
- 単球数 → 大きな変化なし
- 血小板数 → 最後の試験管で測定値が大きくなる可能性がある
- 好中球数 → 大きな変化なし
- 赤血球数 → ○
- リンパ球数 → 大きな変化なし
写真のようにシリンジを放置した場合、重力により血球成分は下に沈みます。血球成分(赤血球・白血球・血小板)の中で赤血球は最も比重が大きく細胞数も多いため、最初の試験管で測定値が大きくなります。
反対に、最後の試験管の方では血小板や血漿成分が多く含まれると考えられます。
AM 66(血液検査学)
血清に含まれないのはどれか。
- アルブミン
- γ-グロブリン
- ハプトグロビン
- フィブリノゲン
- トランスフェリン
解答:4
血清・血漿に関する問題です。
- アルブミン → 血清・血漿の両方に含まれる
- γ-グロブリン → 血清・血漿の両方に含まれる
- ハプトグロビン → 血清・血漿の両方に含まれる
- フィブリノゲン → ○(血漿にのみ含まれる)
- トランスフェリン → 血清・血漿の両方に含まれる
血清と血漿の違いについて知っておく必要があります。
血液を試験管内で放置すると、フィブリノゲンがフィブリンとなり凝固して血餅を作ります。この時の液体成分を血清といいます。
また抗凝固剤を添加した試験管に血液を入れると血球成分が沈みますが、この時の上澄み液を血漿といいます。

血清は血漿から凝固因子を除いたものであるため、血清にフィブリノゲン(フィブリン)は含まれません。
AM 67(血液検査学)

造血器腫瘍患者の骨髄血を用いた染色体核型(G 分染法)の結果を別に示す。異常が認められた染色体を矢印で示す。想定される遺伝子異常はどれか。
- BCR-ABL1
- CBFB-MYH11
- ETV6-RUNX1
- PML-RARA
- RUNX1-RUNX1T1
解答:2
染色体異常の写真問題です。
- BCR-ABL1 → CML・t(9;22)
- CBFB-MYH11 → ○ {M4・inv(16)}
- ETV6-RUNX1 → ALL・t(12;21)
- PML-RARA → M3・t(15;17)
- RUNX1-RUNX1T1 → M2・t(8;21)
写真下部より、16番染色体に逆位(inversion)があることが分かります。
BCR-ABL1は慢性骨髄性白血病(CML)でみられ、9番染色体と22番染色体の転座 t(9;22) を認めます。
CBFB-MYH11は急性骨髄単球性白血病(M4)でみられ、特に異常好酸球が増加している場合(M4Eo)に16番染色体の逆位 inv(16) を認めることが多いです。
ETV6-RUNX1は小児のB前駆細胞急性リンパ性白血病でみられ、この遺伝子転座があると予後良好だといわれています。
PML-RARAは急性前骨髄球性白血病(M3)でみられ、15番染色体と17番染色体の転座 t(15;17) を認めることがほとんどです。ATRA(全トランス型レチノイン酸)による治療が有効です
RUNX1-RUNX1T1は急性分化型骨髄芽球性白血病(M2)でみられ、8番染色体と21番染色体の転座 t(8;21) を認めることがあります。
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