第70回 臨床検査技師国家試験 過去問解説AM(45~58)です。間違いやご要望等ありましたらコメントしていただけると嬉しいです!
問題出典:https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/dl/tp240424-07a_01.pdf
AM 45(病理検査学)
組織の固定原理がメチレン架橋によるのはどれか。
- 酢 酸
- アセトン
- エタノール
- ピクリン酸
- ホルマリン
解答:5
固定法に関する問題です。
- 酢 酸 → 凝固固定
- アセトン → 凝固固定
- エタノール → 凝固固定
- ピクリン酸 → 凝固固定
- ホルマリン → ○(架橋固定)
固定の目的は、タンパク質を安定化させて生きた状態に近い組織構造を保つことです。原理としては架橋固定(メチレン架橋を形成)と凝固固定(タンパク質周囲の水を除去)があり、前者はホルムアルデヒド(ホルマリン)やオスミウム酸、過マンガン酸カリウムなどがあり、後者にはエタノールやアセトン、酢酸、ピクリン酸などがあります。
AM 46(病理検査学)
(A)

(B)

リンパ節の術中迅速組織標本の弱拡大写真(A)と強拡大写真(B)を別に示す。標本にみられる不良の原因はどれか。
- 切り出し
- 凍 結
- 薄 切
- 固 定
- 染 色
解答:3
病理の写真問題です。
- 切り出し → 新鮮でない、切り出す大きさが不適切など
- 凍 結 → 緩速凍結の場合、組織内に空胞(氷晶)が生じる
- 薄 切 → ○(ひび割れやシワなど)
- 固 定 → 過固定による組織収縮など
- 染 色 → 過染など
赤丸で囲った所のように、切片に細かなひび割れが多数認められるため薄切が原因だとわかります。断定はできませんが、凍結切片(術中迅速組織標本)薄切時のブロック温度が低かったことが考えられます。

AM 47(病理検査学)
ヘマトキシリンの分別に用いるのはどれか。
- アンモニア水
- 炭酸リチウム
- 塩酸アルコール
- カリウムミョウバン
- ヨウ素酸ナトリウム
解答:3
ヘマトキシリンに関する問題です。
- アンモニア水 → ヘマトキシリンの色出しに用いられる
- 炭酸リチウム → ヘマトキシリンの色出しに用いられる
- 塩酸アルコール → ○
- カリウムミョウバン → ヘマテインに加えることでレーキを形成
- ヨウ素酸ナトリウム → ヘマトキシリンに加えることでヘマテインに変化
退行性ヘマトキシリン液(カラッチ液・ギル液・ハリス液・デラフィールド液など)を用いた場合、塩酸アルコールを用いて分別(適度な染色性を残す操作)が必要です。
また、ヘマトキシリンの色出しには流水や飽和炭酸リチウム、アンモニア水やリン酸緩衝液(PBS)が用いられます。この操作はヘマトキシリンの色調が変化する特性(酸性側で赤紫色~紫色、pH7.0で青紫色)を利用し、核を赤紫色から青紫色に変化させます。
さらにヘマトキシリンは天然性色素の1つであり、それ自体に染色能力はありません。そこでヨウ素酸ナトリウムを加えることでヘマテインに変化し、さらにカリウムミョウバンを加えることで初めて塩基性色素としての能力を持つようになります。
AM 48(病理検査学)
弾性線維と膠原線維を染め分けるのはどれか。
- PAM 染色
- 渡辺の鍍銀法
- Victoria blue 染色
- Masson trichrome 染色
- elastica van Gieson 染色
解答:5
染色法の問題です。
- PAM 染色 → 腎糸球体基底膜の染色法
- 渡辺の鍍銀法 → 細網線維の染色法
- Victoria blue 染色 → 弾性線維やHBs抗原の染色法
- Masson trichrome 染色 → 膠原線維の染色法
- elastica van Gieson 染色 → ○(膠原線維や弾性線維の染色法)
染色法は沢山あるため、ポイントだけ押さえていきましょう!
| 染色法 | 染色目的 | 染色結果(染色液) | 備考 |
|---|---|---|---|
| PAM染色 | 腎糸球体基底膜の微細構造の観察 メサンギウム基質の変化の観察 | 腎糸球体基底膜・メサンギウム基質―黒色(メセナミン銀) | 銀鏡反応の抑制にはゼラチンを加える |
| 渡辺の鍍銀法 | 細網線維の染色 がんと肉腫の鑑別 | 細網線維―黒色(アンモニア銀) 膠原線維―赤褐色(アンモニア銀) | パラフィン切片は厚め |
| Victoria blue染色 | 脈管侵襲の判断 | 弾性線維―青色(ビクトリア青) | 酸化還元操作を加えるとHBs抗原染色法として使用可能 |
| Masson trichrome染色 | 肝硬変や心筋梗塞における膠原線維の増生を観察 | 膠原線維―青色(アニリン青) 筋線維―赤色(ポンソー・キシリジン/酸性フクシン/アゾフロキシン) 赤血球―橙色(オレンジG) | 分子量の大きさで線維を染め分ける (アニリン青は分子量が大きいため粗な構造である膠原線維、オレンジGやポンソー・キシリジンは分子量が小さいため密な構造である筋線維や赤血球に入り込む) |
| elastica van Gieson染色 | 脈管侵襲の判断 | 弾性線維―黒色(ワイゲルトのレゾルシン・フクシン) 膠原線維―赤色(酸性フクシン) 筋線維―黄色(ピクリン酸) | 塩基性フクシンと酸性フクシンの両方を用いる |
AM 49(病理検査学)
(A)

(B)

食道の PAS 染色標本(A)と α-アミラーゼ消化後の PAS 染色標本(B)を別に示す。消化試験で同定されるのはどれか。
- 線維素
- 中性粘液
- アミロイド
- グリコーゲン
- リポフスチン
解答:4
PAS染色とアミラーゼ消化試験に関する問題です。
- 線維素 → PAS染色陽性かつアミラーゼ消化試験で消失しない
- 中性粘液 → PAS染色陽性かつアミラーゼ消化試験で消失しない
- アミロイド → PAS染色陽性かつアミラーゼ消化試験で消失しない
- グリコーゲン → ○(PAS染色陽性かつアミラーゼ消化試験で消失する)
- リポフスチン → PAS染色陽性かつアミラーゼ消化試験で消失しない
α-アミラーゼ消化試験は、PAS染色陽性物質がグリコーゲンであることを確認する方法です。α-アミラーゼ(ジアスターゼ消化液が用いられる場合もある)を作用させると、組織中のグリコーゲンが加水分解されます。
そのためPAS染色陽性物質がグリコーゲンの場合、アミラーゼ消化試験によりその部位のPAS染色が陰性化します。
今回の写真では、消化前は赤く染まっていた上皮部分がアミラーゼ消化試験により陰性化していることが分かります。
AM 50(病理検査学)

腹水の Papanicolaou 染色標本を別に示す。矢印で示す細胞はどれか。
- 組織球
- 中皮細胞
- 印環細胞癌
- 扁平上皮癌
- 悪性リンパ腫
解答:3
細胞診の問題です。
- 組織球 → 赤血球やヘモジデリンなどの貪食像がみられる
- 中皮細胞 → 細胞質辺縁部の微絨毛様構造が特徴
- 印環細胞癌 → ○(細胞質に粘液を有し、核が圧迫される)
- 扁平上皮癌 → 角化したがん細胞が特徴
- 悪性リンパ腫 → がん化したリンパ球がみられる
細胞質に粘液を有し、核が圧迫されている像が観察できることから、印環細胞癌と判断できます。時として組織球もこの特徴を有することがありますが、組織球の場合は細胞質が泡沫状で貪食像を認めることが多いです。
AM 51(病理検査学)
腎近位尿細管の刷子縁に一致する電子顕微鏡像はどれか。
- 線 毛
- 微絨毛
- ゴルジ装置
- 粗面小胞体
- ミトコンドリア
解答:2
腎臓に関する問題です。
- 線 毛 → 刷子縁と一致しない
- 微絨毛 → ○(近位尿細管に存在:刷子縁)
- ゴルジ装置 → 刷子縁と一致しない
- 粗面小胞体 → 刷子縁と一致しない
- ミトコンドリア → 刷子縁と一致しない
刷子縁とは、小腸上皮細胞および腎臓の近位尿細管細胞に存在し、微絨毛が密に形成されている領域を指します。
AM 52(病理検査学)
神経組織で正しいのはどれか。
- 稀突起膠細胞をニューロンと呼ぶ。
- 小膠細胞は末梢神経系に存在する。
- 星状膠細胞は末梢神経系に存在する。
- 樹状突起は受容した興奮を神経細胞体に伝える。
- ランヴィエ〈Ranvier〉の絞輪はシナプス間隙に存在する。
解答:4
神経組織に関する問題です。
- 稀突起膠細胞を
ニューロンと呼ぶ。 → 稀突起膠細胞=オリゴデンドロサイト 神経細胞=ニューロン - 小膠細胞は
末梢神経系に存在する。 → 中枢神経系に存在 - 星状膠細胞は
末梢神経系に存在する。 → 中枢神経系に存在 - 樹状突起は受容した興奮を神経細胞体に伝える。 → ○
- ランヴィエ〈Ranvier〉の絞輪は
シナプス間隙に存在する。 → 髄鞘の間(有髄神経線維)
神経組織は神経細胞とグリア細胞から構成されています。神経細胞は神経細胞体と神経細胞の突起からなります。
樹状突起は受容した興奮を細胞体に伝え、軸索は興奮を送る役割を果たします。神経細胞から出る長い突起を神経線維といい、髄鞘に包まれているものを有髄神経線維、包まれていないものを無髄神経線維といいます。
また、有髄神経線維で髄鞘が途切れている部分をランヴィエの絞輪と呼びます。
グリア細胞は神経細胞を支え、栄養や代謝に関与しています。中枢神経系のグリア細胞には星状膠細胞(アストロサイト:血液-脳関門に関わる)、希突起膠細胞(オリゴデンドロサイト:灰白質では神経細胞を包み、白質では有髄神経線維の髄鞘を形成)、小膠細胞(ミクログリア:貪食能を有する)が存在します。
末梢神経系のグリア細胞には衛星細胞(神経細胞体の周囲を取り囲む)、シュワン細胞(髄鞘を形成)が存在します。
AM 53(病理検査学)
腹水の原因で誤っているのはどれか。
- 腹膜炎
- 高蛋白血症
- 門脈圧亢進症
- リンパ管閉塞
- うっ血性心不全
解答:2
腹水に関する問題です。
- 腹膜炎 → 腹水の原因となる(腹水の産生・分泌を調節する腹膜が炎症を起こすことでバランスが破綻:滲出性腹水)
- 高蛋白血症 → 腹水の原因とならない(低蛋白血症では水分が血管外に漏れる:漏出性腹水)
- 門脈圧亢進症 → 腹水の原因となる(門脈圧亢進により水分が血管外に漏れる:漏出性腹水)
- リンパ管閉塞 → 腹水の原因となる(リンパ液が溜まり、やがてリンパ外に漏れる:乳び腹水)
- うっ血性心不全 → 腹水の原因となる(血液がうっ滞し、水分が血管外に漏れる:漏出性腹水)
腹水とは、タンパク質を含む体液が腹腔内に貯留する状態です。滲出性腹水・漏出性腹水・乳び腹水の3つに大きく分けられますが少し細かすぎる気もするので余裕があったら覚えてください。
血管内に存在する蛋白質(アルブミン)が水分を引き込む(保持する)力を持っています。なので高蛋白血症では血管外に水分が漏れることは少なく、腹水とはなりません。
AM 54(病理検査学)
細胞死で正しいのはどれか。
- 壊疽は可逆的である。
- 乾酪壊死は脳梗塞で起こる。
- 融解壊死は心筋梗塞で起こる。
- 凝固壊死は脂質に富んだ臓器に多い。
- アポトーシスは発生過程で生理的にみられる。
解答:5
細胞死に関する問題です。
- 壊疽は
可逆的である。 → 不可逆的である - 乾酪壊死は
脳梗塞で起こる。 → 結核で見られる - 融解壊死は
心筋梗塞で起こる。 → 脳梗塞で見られる(脳軟化症) - 凝固壊死は
脂質に富んだ臓器に多い。 → タンパク質が多い臓器で多い(タンパク質変性により凝固するため) - アポトーシスは発生過程で生理的にみられる。 → ○(人の手は最初指と指の間に水かきを持っているが、成熟過程でその部分の細胞はアポトーシスを起こす)
壊死には凝固壊死、融解壊死、壊疽があります。大部分の組織は凝固壊死(心筋梗塞・腎梗塞など)をきたします(結核の乾酪壊死も含まれる)。融解壊死はタンパク質の少ない組織(脳など)にみられます。
壊疽とは、壊死した組織がさらに腐敗菌などの影響を受けたものをいいます。
アポトーシスは、壊死とは異なる細胞死であり「プログラムされた死」とも呼ばれます。壊死とアポトーシスの違いがよく問われるので押さえておきましょう!

| 壊死 | アポトーシス | |
|---|---|---|
| 原因 | 低酸素 損傷 毒 ATP枯渇 | 遺伝的にプログラムされた生理的シグナル |
| ATP | 不要 | 必要 |
| 分解様式 | 膨張 細胞小器官の崩壊 細胞膜の破裂 | 膜ブレブ形成 DNA断片化 |
| 炎症反応 | あり | なし |
AM 55(病理検査学)
石灰沈着を伴いやすい腫瘍はどれか。
- 脂肪腫
- 髄膜腫
- 肝細胞癌
- 子宮頸癌
- 悪性黒色腫
解答:2
腫瘍に関する問題です。
- 脂肪腫 → 蜘蛛の巣状細胞を認めることがある
- 髄膜腫 → ○
- 肝細胞癌 → Mallory硝子体やグリコーゲン等を認めることが多い
- 子宮頸癌 → 白斑形成等が認められる
- 悪性黒色腫 → 異型メラノサイトの増加がみられる
正直、髄膜腫は石灰沈着を伴いやすいという事だけ覚えておけば大丈夫です。ちなみに、石灰化した髄膜腫は比較的増殖が遅いです。
AM 56(病理検査学)
化膿性炎で多数認められる細胞はどれか。
- 形質細胞
- 好酸球
- 好中球
- 組織球
- リンパ球
解答:3
化膿性炎に関する問題です。
- 形質細胞 → 多発性骨髄腫などで多数認められる
- 好酸球 → アレルギーや寄生虫感染でよくみられる
- 好中球 → ○
- 組織球 → 繫殖性炎・増殖性炎などで多数認められる
- リンパ球 → 特異性炎などで多数認められる
化膿性炎(副鼻腔炎が有名)は、ブドウ球菌やレンサ球菌などの化膿菌によって引き起こされ、大量の好中球が滲出します。これが悪化(炎症領域が拡大)すると蜂窩織炎(急性化膿性虫垂炎など)と呼ばれます。
AM 57(病理検査学)
内分泌機能を有するのはどれか。
- 肺
- 子 宮
- 膵 臓
- 脾 臓
- 膀 胱
解答:3
臓器とその機能に関する問題です。
- 肺 → 分泌機能なし
- 子 宮 → 分泌機能なし
- 膵 臓 → ○(内分泌・外分泌機能の両方を有する)
- 脾 臓 → 分泌機能なし
- 膀 胱 → 分泌機能なし
内分泌機能を持つ臓器=ホルモン産生臓器とざっくり考えてOKです。ちなみに、外分泌機能を持つのは消化腺(消化酵素)や汗腺(汗)、乳腺(乳汁)や唾液腺(唾液)などが挙げられます。
もしかしたら「人間ちくわ説」というのを聞いたことがある方がいらっしゃるかもしれませんね。
ちくわは真ん中が空洞になっており、人間もちくわのように口から肛門まで空洞があります。この空洞は外とつながっており、外の世界に分泌する腺を外分泌腺といいます。これが、消化腺も外分泌に分類される理由です。
反対に、体の内側(体液中)に分泌する腺を内分泌腺といいます。
AM 58(病理検査学)
FISH 法で正しいのはどれか。 2 つ選べ。
- 標本は永久標本となる。
- 遺伝子増幅の検出に用いる。
- 染色体転座の検出に用いる。
- 観察には偏光顕微鏡を用いる。
- 核はフルオレセインイソチオシアネート〈FITC〉で染色する。
解答:2,3
FISH法に関する問題です
- 標本は
永久標本となる。 → 蛍光が減衰するため永久標本とならない - 遺伝子増幅の検出に用いる。 → ○
- 染色体転座の検出に用いる。 → ○
- 観察には
偏光顕微鏡を用いる。 → 蛍光顕微鏡を用いる - 核は
フルオレセインイソチオシアネート〈FITC〉で染色する。 → DAPI等で染色
FISH法とは、細胞や組織に存在する核酸(DNA・RNA)と相補的な塩基配列を持つ標識蛍光プローブを反応させて可視化する方法です。染色体検査や分子標的薬の診断などに用いられます。
プローブは蛍光色素で標識されているため蛍光顕微鏡での観察が必要です。さらに蛍光は時間が経つにつれ減衰(褪色)するため永久標本となりません。核は主にDAPIで染色することが多いです。
また、蛍光の減衰を防ぐため染色過程は基本的に遮光状態で行います。


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